 
 婚活中、「ごめんなさい」って言う場面、何度かあった。
 中でも、あのときのことは今でも忘れられない。
婚活Barで出会った彼。優しくて誠実で、ちゃんと私の話を聞いてくれる人だった。
 「いい人」って、こういう人のことを言うんだろうなって思ってた。
でも…どうしても、気持ちがついてこなかった。
 彼といるとき、なんとなく楽しい気がする。でも「好き」とは違った。
 
 告白されたとき、私は即答できなかった。
「ちょっとだけ、時間をください」
 そう言ったのは、せめて傷つけないようにと考えたつもりだった。
でも、それが余計に相手を傷つけてしまったのかもしれない。
 その後、彼からの連絡はぱったりと止まった。
“いい人”を傷つけた自分が許せなかったし、
婚期を逃したような気がした。
 「私、結婚したいだけのはずなのに、なんで自分でうまくいかなくしてるの?」って落ち込んだ。
 
 でも時間が経って気づいた。
 相手に誠実であろうとした私の気持ちも、本当だったって。
あのとき、ムリに気持ちにフタをして付き合っていたら、
 きっとどこかで無理が出て、もっと苦しくなってたかもしれない。
やさしさって「断らないこと」じゃなくて、
 「ちゃんと相手と向き合って、正直に伝えること」なんだと思う。
 
 婚活って、全部うまくいくわけじゃない。
 だけど、「うまくいかなかったこと」にもちゃんと意味がある。
“お断り”の先に、もっと自然に笑える誰かがいたりする。
 それは、自分にとっても、相手にとっても同じ。
あの経験があったからこそ、私は本当に心地いい人を見つけられたんだと思う。